小麦澱粉をヒドロキシプロピル化し, さらにこれを糊化した糊化済ヒドロキシプロピル小麦澱粉の調理・加工適性を明らかにする目的で, ヒドロキシプロピル化または糊化済ヒドロキシプロピル化小麦澱粉の粘度およびゲルの特性, ならびにスポンジケーキへの添加効果について, 物性測定および官能評価を行い次のような結果を得た. (1) ヒドロキシプロピル小麦澱粉は小麦澱粉に比べて熱分析による糊化の温度範囲が低温側に移行し, 糊化に要するエネルギー量は約1/2に減少し糊化しやすいことを示した. (2) ビスコグラフィーから, ヒドロキシプロピル小麦澱粉は粘度上昇開始温度が約27℃低温側に移行し, 最高粘度・冷却時の粘度は約2倍を示した.ショ糖添加による粘度の増加が顕著であり, 酸添加は粘度を増すが攪拌加熱による安定性の低下が認められた.澱粉濃度5.0~8.0%における粘度の差はわずかであり, 高濃度澱粉溶液の膨潤抑制が示された. (3) 糊化済ヒドロキシプロピル小麦澱粉の糊液の粘度は酸およびショ糖添加により低下し, ケーキバッターの粘度に及ぼす影響は添加量が多いほど粘度が大となった. (4) 糊化済ヒドロキシプロピル小麦澱粉を添加して調製したスポンジケーキは対照の小麦粉に比べて軟らかく, 水分保持がよく, 低温保存時の硬さの増加が抑制され小麦澱粉添加との差が認められた. (5) 官能評価から糊化済ヒドロキシプロピル小麦澱粉10%添加のスポンジケーキは対照の小麦粉との間に有意の差は認められず対照の小麦粉と同様に好まれた.