DODACを試料に用い, 柔軟仕上げ剤の繊維への吸着現象を透過型電子顕微鏡, 原子間力顕微鏡により直接観察を行い, 従来の単分子層吸着モデルとして知られている機構と異なった結果を得た.また, 剛軟性, 吸水性についても前述の結果に沿った検証を行った.以下にその要約を述べる. (1) 電子顕微鏡観察の結果, 水中でベシクルを形成したDODACは単分子の状態で繊維表面上に吸着するのではなく, ベシクルの状態で吸着することが確認された.超音波を照射しないDODAC試料では粒径の大きい多重層ベシクルを形成するが, 超音波を照射した試料では粒径の小さい1枚膜ベシクルを形成すると考えられる.X線光電子分光分析の結果も円形像はDODACの分子集合体であることを支持した. AFM 観察により, 水中でベシクルを形成したDODAGは, 繊維表面上ではべシクルの中から水が抜けてつぶれた状態になることがわかった.また2分子膜はお互いに重なった interdigitate 構造をとっていると思われる. (2) 超音波処理したDODACはべシクルの粒径が小さいため柔軟効果が現れるが, 超音波処理しない試料では柔軟効果は見られない.柔軟効果を発現するのは (1) で述べたinterdigitate構造なのかどうかは現段階では不明である. (3) 同一のDODAC濃度において, 繊維表面に吸着したべシクルの粒径が小さいほど布の吸水性は高い.これは従来の単分子層吸着モデルでは説明できない現象である.