きのこは食物繊維が豊富で種々の薬用効果があり, 健康食品素材として注目されている.きのこを添加したパンの製造ならびにその特徴について研究を行った.5% のシイタケあるいはエノキタケを添加したパンは, 通常の食パンとほぼ同程度の体積, 比容積を示したが, 同量のマイタケ, ブナシメジ, キクラゲあるいはナメコを添加したパンでは通常の食パンに比べ体積, 比容積が著しく減少した.マイタケ, ブナシメジ, ナメコでは, 添加量に伴いガスの発生量が増加したが, これらきのこのパン生地への添加は, パン酵母に栄養源を与え, 発酵を促しガス発生量を増加させ, 結果として過剰に発生したガスがパン生地を破壊し, 体積の減少したパンが焼き上がるものと推定された.一方, パン酵母を含む液体培地に 5% 以上のシイタケを添加した場合では, 発酵によるガスの発生は認められず, パン酵母に対する生育阻害が認められた.生地中では, シイタケとパン酵母との接触の機会が比較的少ないため, 酵母は完全に生育が抑えられることなく, 過剰なガス発生がない程度に発酵が行われ, 結果として標準のパンと同程度に膨らむものと考えられた.