本研究では, 魚骨の有効利用を目指して, 酢酸溶液に魚骨を浸漬したときの物性および成分の変化について調べた.生または蒸したアジの骨を, 4%酢酸溶液に120時間浸漬した.骨の破断強度はレオメータにより測定し, 魚骨の無機成分は, ICP-AESにより測定した.魚骨を酢酸溶液に浸漬すると, 破断に要する最大荷重は浸漬後1時間で急激に減少し, 120時間まで減少し続けた.魚骨を酢酸溶液に浸漬している間に重量と椎体の直径は減少し, 魚骨の水分量は増加した.このことは, 酢酸溶液に浸漬することにより魚骨の成分の移動があったと推察される.酢酸溶液に浸漬することによりタンパク質は, 魚骨からほとんど溶出しなかったが, 魚骨の無機成分は, 減少しているのがみられた.酢酸溶液に浸漬した魚骨は, 急激に軟化した.この軟化は, 酢酸溶液に骨の無機成分が溶出したものと考えられる.魚骨を酢酸溶液に浸漬する場合, 生で浸漬するよりも加熱してから浸漬した方が, 短時間で軟化したが, 無機成分の溶出は少なかった.