ヒドロキシプロピル化ならびに架橋形成の二重に修飾した置換度の異なる小麦澱粉3種を試料とし, 化工の程度と物性との関係を明らかにすることを目的とした.測定は粒度分布, X線回折, 熱分析, 膨潤力・溶解度, フォトペーストグラフィーによる透光度, 粘度, ゲルのテクスチャー, 動的粘弾性, 白度について小麦澱粉と比較し, 次のような結果を得た. (1) 粒度分布の測定から, 低置換度のヒドロキシプロピル小麦澱粉の平均粒径は大きく, 高置換度は小さい. (2) 熱分析からヒドロキシプロピル小麦澱粉3種は小麦澱粉に比べて9℃低温で糊化し, 糊化に要するエネルギー量は小さく糊化しやすい. (3) ヒドロキシプロピル小麦澱粉は低温で膨潤・溶解し, 特に低置換度の澱粉が膨潤・溶解しやすく, 次いで中置換度であり, 高置換度は膨潤・溶解しにくい. (4) フォトペーストグラフィーによる透光度曲線から, ヒドロキシプロピル小麦澱粉は小麦澱粉に比べて透光度の上昇が約11~15℃低温となった.特に高置換度は低温で上昇し98℃における透光度が低いのに対し, 低置換度は最も高温で上昇し高い透光度であり, 中置換度の透光度は低い. (5) 粘度測定からヒドロキシプロピル小麦澱粉は小麦澱粉に比べて約20℃低温で糊化し, 低置換度は最高粘度およびセットバックが大きい.高置換度は粘度が低く, 中置換度は高粘度でこれら2種はいずれも熱安定性が大であった. (6) ヒドロキシプロピル小麦澱粉の7.5%糊およびゲルは軟らかく付着性は小さく, 凝集性が大で内部結合力の大きい性質を示した.3種の中では低置換度は硬くべたつきが小さく, 高置換度は軟らかく, 中置換度はべたつきが大きい. (7) 澱粉濃度12%ゲルの動的粘弾性の測定から, ヒドロキシプロピル小麦澱粉は小麦澱粉に比べて貯蔵弾性率が小さいゲルであった. (8) ハンター白度の測定から, ヒドロキシプロピル小麦澱粉ゲルは透明度が高く, 特に低置換度および高置換度は透明性に優れていた.