児童・生徒の間食を選ぶ行動を通して, 北タイにおける地域差を明らかにするため, 都市部のチェンマイ, 郊外の町ファーン, 農村部のサムーンで, アンケート, ヒヤリング等の調査を実施した.調査結果は, 家政学, 統計学, 社会学等の方法論を用いて分析した.その結果は以下のとおりである. (1) 間食の出現率合計や1人あたりの間食の種類数で, チェンマイが最も多く, 次いでファーン, サムーンの順となり, 顕著な地域差があることが認められた. (2) チェンマイの児童・生徒は, 多様な種類の間食を食べているのに対し, サムーンの児童・生徒は, 種類も少なく, よく食べる間食とそうでない間食とに2極化することが認められた. (3) 各地域の出現率を高い順位に並べたところ, 高い順位 (果物, 牛乳など) と低い順位 (ゼリー・グミとスルメ) の間食は, 地域間で同じであることが分かった.また, 中間的な順位を占める間食 (ファーストフード, 炭酸飲料, チョコレート, タイおやつなど) は, 地域によって異なっていた. (4) 各間食の出現率の地域比較において, 五つのパターンが認められた. (5) これらの地域差の生じる要因は, まず経済的要因として, 児童・生徒の小遣いの多少, 販売価格, 販売店の有無・多寡, 販売方法などである.つぎに社会・文化的要因として, チェンマイの欧米志向と新奇性・積極性, ファーンの自己完結性と保守性, サムーンの貧困性と消極性などの地域特性と, 情報量 (テレビCM, 友人からの情報など) の地域差等があげられる.各間食に対して, それぞれの要因の影響の強弱や組合せが異なることによって, 間食を摂る行動に地域差が生じたと考えられる.