高齢女性用の衣服の身体適合性を改善するために, 高齢女性57名の背面形状について研究した.高齢女性の体幹を3次元的方法で計測し, 背面形状をシルエットと正中線の2種のカーブで表現した.それぞれのカーブを, 数量的に解析するために, 3円弧3直線で近似し, 25のパラメータで表現した.シルエットと正中線カーブの形は肩甲骨付近で異なったが, 両カーブの間の相関は高かった。若年 (松山等 : 家政誌, 49, 69-76, 1998) との比較の結果, 高齢女性は体幹が前傾し, 肩甲上部が前に傾き, 背中が丸く, 腰部から臀部が平らなことが明らかとなった.これらの形態の年齢変化は, 多くの高齢女性が不満とした衣服の身体不適合 (渡邊等 : 家政誌, 48,893-902, 1997) を引き起こすと考えられた.また, 個人の特徴を表す要因を明らかにするため, 主成分分析を行った.第1主成分は “轡部の突出と腰部の偏平さに関わる主成分”, 第2主成分は “体幹の傾きと肩甲上部の傾きに関わる主成分”, 第3主成分は “腰部・轡部のカーブのなだらかさ”, 第4主成分は “ウエストラインよりも上の背面の丸さに関する主成分”と解釈された。これらは先に述べた高齢女性の衣服の不適合部位と深く関わっていると考えられた.このような高齢女性の背面形状の特徴を, ドレスダミーや原型の設計に組み込むことによって, 衣服の適合性を改善することができるものと考えられた.