飯の構造を走査電子顕微鏡で観察するための方法として, クライオSEM法, 化学固定法, 凍結乾燥法, 低真空法の4種類の方法を選択し, デンプンの水和・膨潤状態に着目して評価した. その結果, 低真空観察法とタンニン酸オスミウム固定法では, 試料本来の構造と考えられる緻密な構造であったが, デンプンの水和状態を考察できるような情報は得られなかった.また, 凍結乾燥法は胚乳細胞内部全体が網目状構造になり, その網目の大きさは凍結速度依存性が大きく, 凍結時の氷結晶の大きさに由来する2次的構造であった.一方, 凍結する点では類似のクライオSEM法は, デンプンの水和・膨潤状態を明瞭に観察でき, 他の3法と比較して情報量の多い結果であった. この結果からクライオSEM法で食味の異なる飯を観察し, 硬くて粘りの少ない飯のデンプンは膨潤の程度が少ないことがわかり, クライオSEM法の観察結果はテクスチャー, 官能的な評価と関連性もあり, 有効な観察方法であった.