就寝前の寝床内の下肢部加温が, 睡眠中の生理反応および寝床内気候, 睡眠感に及ぼす影響を若年者と高年者で比較した.対象は, 健康な若年女性5名 (平均年齢21.8歳), 高年女性5名 (平均年齢60.3歳) とした.実験は, 二つの人工気候室を用い, 1室は居間を想定し20℃, 60%RH, 2室は寝室を想定し13℃, 60%RHに保った.就寝前に1室で30分安静を保ち, その後2室で電気敷毛布であらかじめ下肢部を加温した寝具で23 : 00~7 : 00まで就寝してもらった.電気敷毛布の電源は入床と同時に切った.寝床内気候, 体動, 皮膚温, 心拍数は連続測定し, 主観申告 (温冷感, 快適感, 湿潤感, 睡眠感) は入床時と起床時に, それぞれ申告してもらった.胸部の寝床内温度に有意差は見られなかったが, 足部は有意に高年者の方が低かった.安静覚醒時の皮膚温は, 足先, 指は高年者で有意に高く逆に胸は若年者の方が有意に高かった.就寝時では胸部, 平均皮膚温が高年者で有意に低かった.心拍数には有意差は見られなかった.睡眠感は睡眠維持の因子が高年者で有意に良かった, 就寝前の寝床内加温に対する胸部および平均皮膚温, 足部の寝床内気候, 主観的睡眠感に差が見られたことから, 年齢差を考慮した使用方法や温度設定の検討が必要であることが示唆された.