アズキ, インゲンマメ, ラッカセイ, ダイズの4種類のマメから調製した生餡と練り餡について, テクスチャーの測定と官能検査を行い, 光学顕微鏡, クライオ走査電子顕微鏡, 低真空走査電子顕微鏡による, 餡および餡粒子の形態観察と, 併せてそれらの特徴を考察した.主な結果は次のとおりである. (1) 餡のテクスチャー測定における粘性の値は, 生餡ではラッカセイとダイズが高く, 練り餡ではいずれの餡も高い値を示した.付着性はラッカセイとダイズの練り餡において高い値を示した. (2) 餡の官能検査で「味の好ましさ」は, アズキ餡が最も高い値を示したが, その他の餡もプラス側の評価を受けた.インゲンマメ餡では「ざらつき」が最も大で, 粘性はラッカセイとダイズが大であった.「風味」の良さでは, 食べ慣れたアズキ餡に次いでラッカセイ餡が高い評価を受けた. (3) ラッカセイから得た餡粒子は, アズキ, インゲンマメの餡粒子に比べて円形度では大差ないが, 若干小型であった.ダイズの餡粒子は長径短径の差が著しく, 子葉細胞本来の形態を保持していた. 餡粒子のクライオSEM観察によると, アズキ, インゲンマメの餡粒子は球状であるのに対して, ラッカセイとダイズの餡粒子は張りのない形を示し, これらの表面構造の差は餡粒子の形状と相まって, なめらかさの評価に影響するものと考えられた.切片の光学顕微鏡観察からは, デンプンや脂質, タンパク質の存在状態や細胞壁の性状に差があることがわかった. (4) 生餡と練り餡の低真空SEM観察により, 餡粒子問に存在する物質の状態を観察することができた.これらは粘性や付着性に関係すると考えられた.またラッカセイ餡では, 餡粒子外に脂質が漏れ出ているのが観察され, これが風味の良さと粘性に関与していると考えられた.