履き物設計の基礎資料を得ることを目的として, 22・28・34℃, 50%RHの温熱環境下, 着衣状態下において足部の皮膚温, 皮膚血流量及び直腸温の測定を行った.被験者は20~29歳の健康な女子学生20名で, 着衣の保温力は0.2clo (22℃), 0.26clo (28℃), 0.15clo (34℃) で, 各被験者共通着衣とした.主な結果は次の通りである. (1) 足部の平均皮膚温は29.9±1.2℃ (22℃), 33.3±1.0℃ (28℃), 36.1±0.5℃ (34℃) であり, 低温環境ほど部位差, 個人差が大となった。22℃の低温暴露により皮膚温は趾先, 踵で著しく低下する一方, 34℃の高温暴露では皮膚温の上昇が部位差, 個人差ともに小であった. (2) 皮膚血流量は34℃で全被験者とも増加するが, 22℃と28℃問では顕著な差はみられず, 特に22℃下では個人差が大であった. (3) 直腸温はいずれの環境下においても32.3±0.3℃と比較的安定しているが, 低温暴露中に血管調節反応が悪く皮膚温の低下がみられない被験者では体温の低下が認められた. (4) 低温環境下における足部の温熱生理反応と体温調節との関係は大きく次の3型に分類された.1型は血管収縮反応が良く, 低温暴露と共に皮膚温が低下し直腸温が一定に保持される群.II型は28℃予備室ですでに血管収縮が起こり血流量の減少, 皮膚温, 直腸温共に低下する群.m型は血管収縮反応が弱く, 低温暴露でも皮膚温の低下が見られず, 直腸温が低下する群. (5) 足部の温熱生理反応が全身性の体温調節に影響を及ぼし, 足部の保温・冷却が全身性の快適感や健康を左右することが示唆された.