仏事の供応の中で, 核となる膳部, 酒肴の部などの前後につけられる, 小食他の食事について分析した.小食他の食事は, 全体としては, いずれもうどん, そばなどの麺類, または飯 (白飯または変わり飯) に1~2菜の簡素な構成で, 核となる膳部を補完する位置づけにある.そして, これが膳部のハレ食, 特別の食に対して, 小食他の特徴としてのケの食, 日常性を強める要因となったと考えられる. さらに, 小食他の特徴としては, 飯類, 麺類の出現頻度の差違, および飯類の種類, 菜の料理などにみられる地域性があげられる.これらの地域性は, 第1の特徴である, 人々の日々の生活の中で地域の風土に育まれ, 伝承されたケ, 即ち日常の食を反映したものであり, さらには, 例えば西讃における仏事に麺類をさけるなどの地域の食習慣の影響も推定できる. 前報では, 仏事などの供応の食, ハレ食においては核となる膳部の料理 (皿, 平皿) が時代と共に, 地域差を超えて類型化し, 形として伝承されていくことを明らかにした.対照的に今回の資料の分析では, 同様の仏事の供応, ハレ食においても, 小食他の部分では日常性・ケの要素が強く, さらにこれを要因とする地域性が認められた.このことは, 小食他をハレ食の中のケ, 日常の食事と位置づけることができ, 小食他はハレ食の中では特異な存在であると考えられる. 今後もさらに同系列の資料の収集, 分析をすすめ, 香川県域の江戸末期から昭和初期の食構造を明らかにしていきたい.