超高齢化社会において, 都道府県財政において老人福祉費は増加していくものと考えられる.そして, 2000年4月に導入される介護保険制度によって, その動きは加速されるものと考えられる.しかしながら, 介護サービス等が各都道府県に与える経済波及効果については十分な検討はなされていないようである.本研究では, 高齢者の人口割合がほぼ全国と同じである栃木県, 京都府及び福岡県を取り上げ, 介護保険制度の導入が各府県に与える経済波及効果の推計を試みた.即ち, 厚生省 (2001年より厚生労働省) が全国推計した介護保険の市場規模を用いて, 3府県が作成した各府県の90年産業連関表を用いて2000年及び2010年の経済波及効果を推計した.併せて, 雇用者数も推計した.その結果, 2000年における栃木県, 京都府及び福岡県の介護サービスの市場規模は, それぞれ, 684億円, 905億円及び1,710億円となった.また, 経済波及効果は, 513億円, 801億円及び1,787億円となった.波及効果を含めた雇用者数は8,900人, 12,600人及び25,600人となった.また, 介護サービスに関わる必要労働人口は, 5,600人, 7,400人, 及び14,000人となった.そして, 2000年から2010年にかけて介護サービスの市場規模の増加は, それぞれ, 357億円, 530億円及び967億円となった.また, 経済波及効果の増加は, 268億円, 469億円及び1,555億円となった.波及効果を含めた雇用者数の増加は4,700人, 7,400人及び18,100人となった.そして, 介護サービスに関わる必要労働人口 (ここでは介護サービスに関わる必要な労働人口の意味で使用している) の増加は, 2,900人, 4,300人及び7,900人と推測された.