赤外線の放射波長の食品表面への影響を明らかにするために, 放射波長の異なるヒーターでモデル食品を加熱した場合の表面近傍の温度変化を測定し, 赤外線吸収エネルギー (赤外線吸収による内部発熱量) Δ Q ri を推算した.加熱60秒後の結果を放射体および試料間で比較することによって, 赤外線の浸透性を検討し, 以下のことが明らかになった. (1) 1.2% 寒天ゲルでは, 短波長領域の赤外線の放射率が高いハロゲンヒーターによる放射加熱において, 表面からの深さ 3mm 程度まで赤外線吸収による内部発熱が存在することが明らかになった.一方, 遠赤外線ヒーターは, 深さ 1mm の場所においても赤外線吸収による内部発熱はほとんど認められず, 長波長領域の赤外線の浸透性は小さいものと推察された. (2) 1.2% 寒天に 5% コーンスターチを加えたゲルや魚のすり身では, 糖質やたんぱく質の存在により1.2% 寒天ゲルよりも赤外線吸収による内部発熱の影響は顕著ではなかったが, これらの試料においても短波長領域の赤外線が長波長領域の赤外線よりも浸透性が大きいことが確認された.