本研究では, 住環境と子どもの発達の関連性を検討する第一段階として, 住環境と「育てる側」である母親との関連性について分析を行った.その結果, 住環境に関する母親の評価が, 母親の活動制限感に影響を及ぼすことによって, 母親の子どもに対する態度を変化させていることが示された.養育態度に影響を及ぼしているとされる様々な要因では説明できない残差の一部がこの住環境要因で説明可能と解釈できると推察されたことからも, 今回の調査の結果は意義のあるものだと言えるだろう. 子育てのための住環境問題が深刻化している現在, 不適切な養育態度や育児ストレスの原因となる他の要因の改善と同様に, 今回の分析結果から得られた住環境要因, 特に住居内スペースの質の向上, すなわち, 「自分のためのスペース」の確保や使い易い間取りの工夫などの環境要因を特定・改善していくことは, 有効であると考えられる.