小豆は通常浸漬せずに煮熟されることが多く, 加熱軟化に長時間を要する.本研究では, 小豆の加熱前の浸漬・冷凍処理が生餡および練り餡の品質に及ぼす影響について検討し, 以下のような結果を得た. (1) 腹切れの発生は浸漬により短時間に進行し, 冷凍処理により一層促進された. (2) 餡調製のために適度な煮熟時間 (99.5℃) は, 未処理では90分, 浸漬処理では45分, 冷凍処理では30分であった. (3) 生餡の水分は冷凍処理で最も多かった.浸漬により生餡の赤味度・黄味度とも低くなり, 冷凍処理によりさらに低下した. (4) 最終糖濃度23.8~44.6%の練り餡の場合, いずれの処理においても高糖濃度のものは水分が少なく, 保存性の向上に有効であることが認められた. (5) 生餡と練り餡の光学顕微鏡観察により, 冷凍処理を行った餡粒子には細胞膜の損傷が認められた. (6) 冷凍処理した生餡より調製した練り餡は, 短い練り時間でやや粘性を帯びた物性と特有の薄紫色の色調を呈し, 官能検査の結果, なめらかさのある試料と評価された.