本研究の目的は, 健康的な食生活を実践する力の育成において自己効力感を高めることの重要性を明らかにし, 家庭科における栄養教育を通して健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高めるための効果的な方法について検討することである.高等学校家庭科「食物」領域の学習の前後で質問紙法による調査を行い, 高校生の食物と栄養に関する基礎的知識, 献立の栄養評価力, 調理技術, 健康的な食生活の実践に対する自己効力感, 食行動の学習前後の変化および相互関連性を明らかにした.調査対象はA高等学校2年生男子68名および女子113名, B高等学校3年生男子117名および女子122名である.パス解析の結果, 健康的な食生活の実践に対する自己効力感は食行動に影響を及ぼしていること, 食物と栄養に関する知識や調理技術は健康的な食生活の実践に対する自己効力感に影響を及ぼしていることが明らかとなった.さらに, 家庭科における栄養教育を通して健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高めることが可能であることが示された.本研究により, 生徒の健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高め, その実践を促すためには, 家庭科における栄養教育を通して, 食物と栄養に関する基礎的な知識の定着を図り, 献立の栄養評価力を高め, 調理技術を向上させることが重要であることが示された.