室温変化が, 睡眠中の被覆行動に及ぼす影響を検討した.対象は, 健康な若年女性 8 名 (平均年齢21, 8歳) とした.実験は人工気候室を用い, 夏期にクーラーをタイマー設定で使用した場合を想定し25℃60%RHを1時間保った後, 1時間をかけて28℃65%RHに室温を上昇させ, 6時間をかけて27℃60%RHまで低下させた.被験者は就寝前に1室で30分安静を保ち, その後2室で23 : 00~7 : 00まで就寝してもらった.体動をビデオにより連続測定し, 身体の17部位について, タオルケットによる被覆の有無を1分毎に判定し, 被覆されている時間を算出した.皮膚温, 寝床内気候は3分毎に連続測定した.室温上昇に伴い, 上肢, 頸部, 肩部の被覆されている時間は有意に短縮したが, 他の部位では差はみられなかった、終夜の被覆されている時間には部位差がみられ, 上肢, 頸部, 肩部で躯幹部, 下肢よりも有意に短かった.皮膚温, 胸部の寝床内気候に室温変化に伴う有意な変化はみられなかった.足部の寝床内温度は, 室温上昇に伴い有意に上昇した.これらのことから, 行動性体温調節の一つである被覆行動が睡眠中も有効であり, 上肢, 頸部, 肩部に顕著にみられることが示唆された.