麹菌によって発酵した大豆から抽出した大豆発酵抽出物 (FSE : Fermented Soy Extract) はゲニステインとダイゼインのようなイソフラボンアグリコンを40% (w/w) 含んでいる.今回我々は, 低カルシウム食で飼育した卵巣摘出 (OVX) 若年ラット (5w) および加齢ラット (34w) の骨密度および骨強度の低下などに対するFSEの影響を試験した.FSEは, 4週間にわたって両方のOVXラットに経口的に投与された.飼育期間終了後, 若年OVXラットの大腿骨は, 偽手術されたラットの大腿骨と比較して著しく骨密度および強度が減少した.しかしながら, FSEを250,125および62.5mg/kg/d (イソフラボンとして100, 50および25mg/kg/d) を投与した各群とゲニステイン (50mg/kg/d) を投与した群において, これらの減少は, 観察されなかった.また, ダイゼインによる骨密度の減少の予防効果は, ゲニステイン投与群と比較して弱かった.卵巣を摘出されたラットのすべてにおいて, 子宮の萎縮が観察されたが, FSEまたはゲニステインを投与された群において, 子宮重量の増加は認められなかった.さらに, 骨の代謝が若年ラット (5w) より活発でない加齢ラット (34w) を用いて, OVXによる骨塩量減少に対するFSEの影響を試験した.加齢ラットにおいても, OVXによる骨密度および強度の減少は, FSEとして62.5mg/kg/dを摂取させることにより予防できた.以上の結果より, FSEは卵巣を摘出した若年ラットおよび加齢ラットにおいて, 骨密度および強度の維持改善に有効であることが示された.また, その効果は, イソフラボンであるゲニステインよることが示唆された.