学生寮居住者に対して実施したアンケート調査に基づき, 室内の化学物質に起因すると考えられる自覚症状の実態と住宅属性や住まい方との関係について分析した結果, 以下のように要約できる. 1. 自覚症状は, 調査対象者の約半数から申告された.発症時期は入寮後すぐの場合が多いが, 症状によっては1年以上経過後の場合もある. 2. 申告内容は, 竣工直後では「異臭・刺激臭」の申告が突出して多く, 築後年数の経過に伴い複数の症状が申告される傾向がある. 3. 自覚症状の申告には, 住宅属性のほか在室時間, 換気, 暖房機器使用状況などの住まい方, アレルギー性疾患経験などが有意に関連している. 4. 「何らかの自覚症状の有無」, 「異臭・刺激臭を感じる」, 「喉が痛い・乾きやすい」, 「疲れやすい」, 「ぼんやりしがちである」, 「イライラしやすい」の自覚症状申告率については, ロジスティック回帰分析により得られた影響度の大きい因子に対して優先的に改善する住まい方が提案できる. 5. ホルムアルデヒド濃度の竣工後経過日数による濃度減衰に伴い, 「異臭・刺激臭」の申告率は減少し, 室内濃度指針値を満たすと申告率は1割程度になる. 6. ホルムアルデヒド濃度測定結果と自覚症状申告の関係を事例的に検討した結果, 居住者の換気行為は症状の予防的手段として有効であると考えられる.