本研究では, 模擬唾液および模擬咀嚼ゼリーを用いてモデル食塊を調製し, テクスチャー特性測定, 若年者および高齢者で飲み込み特性についての官能評価を行った. (1) 模擬唾液の含有率を変化させたモデル食塊の場合, 含有率が少ないほど硬く, 多くなると軟らかくなる傾向がみられた.一方, 模擬唾液の粘性率を変化させたモデル食塊は, 模擬唾液の粘性率が低い方が硬く, 粘性率が高くなるにつれ軟らかくなった. (2) 模擬唾液含有率が異なるモデル食塊についての官能評価において, 若年者では, 模擬唾液20%以上のモデル食塊が飲み込み易いと評価された.一方, 高齢者では, 模擬唾液26%モデル食塊が, 他の試料に比べ有意に飲み込み易く, 口中の残留感が少ないと評価され, 高齢者にとって飲み込み易い模擬唾液含有率は, 若年者と異なることが認められた. (3) 添加した模擬唾液の粘性率が異なるモデル食塊についての官能評価においては, 若年者, 高齢者ともに, いずれの評価項目においても各試料間の平均推定値に有意な差は認められず, 用いた模擬唾液の粘性率の範囲においては, 粘性率の違いは飲み込み特性に影響しないことが示唆された.