本研究は, 誘電凍結法の効果を調べることを目的として, 緩慢冷凍庫 (-20℃) および急速冷凍庫 (-45℃), 同種の急速冷凍庫内に磁場 (20, 30, 40Hz) を発生させた誘電冷凍庫の3種類を用いて鶏胸肉を冷凍し, 緩慢凍結試料は-20℃で, その他は-30℃で1週間又は6カ月間貯蔵した後, 解凍後および蒸し加熱後の試料について重量変化と破断強度を測定し, 光学顕微鏡, 透過電子顕微鏡, クライオ走査電子顕微鏡による組織観察および画像解析を行った.1週間貯蔵した試料においては, 冷凍方法による顕著な相違は認められなかった.しかし, 6カ月間貯蔵では, 緩慢凍結と急速凍結を行った試料の破断応力値は有意に大となったが, 誘電凍結した試料ではこれらの値の変化は小さかった.急速凍結した試料の貯蔵6カ月後における筋線維の横断面には, 筋線維内に冷凍保存中のたんぱく質の変性によって生じたと考えられる大きな空隙が生じていた, これに対して誘電凍結した試料の顕微鏡像では, 極めて小さい空隙が分散して比較的冷凍前に近い状態を示していた.筋線維横断面の形態を画像解析して真円度の尺度で比較した場合も, 誘電凍結した試料は冷凍前の試料により近い傾向を示した.これらのことから誘電凍結法は, 鶏胸肉の比較的長期の保存に効果があると考えられた。