水生昆虫の個体群密度は河川生物モニタリングの主要な評価項目であるが,台風等の影響を受けて調査時期により大きく変動するため,評価の不確実性が問題となることがある.本研究は,平常時の個体群密度が過去4年間に調査された多摩川流域の6地点で,2005年の台風で生じた大出水直後にウルマーシマトビケラ地域集団の遺伝的多様性をAFLP法で調べた.その結果,台風直後の多型遺伝子座の割合(%P)は,台風の影響を受けていない過去4年間の平均個体群密度(Nnon-typhoon)と正の相関があることが明らかにされた.この相関を定式化した単回帰モデル%P=0.134 log10 Nnon-typhoon+0.186を用いることで,台風が起きた直後であっても,%Pを測定すれば,台風が影響していなかった状態の個体群密度を推測できる可能性が示された.