閉鎖性水域の汚濁負荷削減を社会的最小費用で実現するために排出権取引を導入することが考えられる.本研究では,排出権取引の影響を事前に評価する応用一般均衡モデルを開発する.また,このモデルを伊勢湾流域圏に適用し,排出権取引導入の影響について計量分析を行う.分析の結果,1)鉱工業のみを対象にしたキャップ&トレード方式による排出権取引を実施した場合,四日市地域や岐阜地域で水質汚濁負荷が削減され,愛知県内の地域がその費用負担を行うこと,2)ベンチマーク&クレジット方式により農林水産業をこれに加えた場合には,岐阜県内の地域や豊橋地域,伊勢地域で水質汚濁負荷が削減され,名古屋市,豊田地域,四日市地域がその費用負担を行うこと,3)後者の方が地域に与える影響が緩和されること等が明らかにされる.