雨水の流出経路が源流域河川の溶存有機炭素(DOC)濃度と流量の関係(C-Q関係)に及ぼす影響を明らかにするとともに,DOC濃度の推定手法について検討した.斜面下端をソースとする飽和地表流(SOF)が卓越する場合,C-Q関係は強い正の相関関係を示した.他方,斜面上方をソースとする飽和地中流(SSF)が卓越する場合,C-Q関係は極めて弱い正の相関関係を示し,さらに,線形回帰式の傾きは前者の約4%と著しく小さかった.同一出水内において流出経路がSOFからSSFへと変化すると,DOC濃度はSOF卓越時の線形回帰式による予測値よりも低くなった.以上より,SSFの発生は河川水のDOC濃度に対して希釈作用を持つと解釈できた.DOC濃度の推定式を得るには雨水の流出経路の違いによってC-Q関係が異なることに着目して解析すべきである.