2004年,富山県西部の庄川において,下流のサケ捕獲施設が洪水によって破壊されたため,サケの自然産卵が観察された.産卵に関連した行動およびふ化したサケ稚魚の調査から,産卵場所は庄川扇状地下流端付近の湧水帯と一致していた.湧水は二次流路やサイドプールといった多様な環境をもたらしていた.また,冬季においてはこれらの湧水起源の水域はそれ以外の水域よりも高い水温を保っていた.これらの特性がサケの再生産に貢献しているだけでなく,環境と生物の多様性にも関わっていたと考えられる.河川整備において,湧水の保全が重要であることが確認された.