糖尿病に合併する骨・ミネラル系の代謝異常の病態とその成因について以下の検討を加えた。2型糖尿病症例での骨芽細胞ならびに破骨細胞機能の測定により, 骨芽細胞機能の低下とともに, 一方で破骨細胞機能の亢進を認めた。そこで骨芽細胞由来のbone coupling factorの一つで破骨細胞の形成に対し抑制的な作用を有するosteoprotegerin (OPG) を測定したところ, 血中OPGは予想に反しむしろ高値の傾向を示し, しかも骨芽細胞機能ではなく破骨細胞機能との間に明らかな正の相関を, そして骨塩量との間には負の相関を認めた。すなわち糖尿病状態下では骨吸収の亢進が骨量の減少に重要な役割を果たすとともに, OPGは骨形成の低下にともなう骨量のさらなる減少に対し防御的に作用することが示された。またこの骨吸収の亢進の少なくとも一部には, 高血糖状態下でのポリオール経路の活性化と酸化ストレスの増大が関与している可能性が推測された。国民の高齢化にともない, この近い将来に骨量の減少を有する糖尿病患者数の増加が容易に予想されることから, 本研究を基盤とした骨減少症の病因の解明や, 治療ならびに予防法の確立が早急に求められている。