トリプトファン (Trp) の異化代謝にはビタミンB1, B2, B6が関わっている。そこで, 低用量, 中用量, 十分量のビタミン混合を含む飼料を投与した時にTrp異化代謝がどのように変動するのかを, 健常ラットと糖尿病ラットを用いて比較した。健常ラットにおいても, 糖尿病ラットにおいても, 飼料中のビタミン混合含量の差異はTrp異化代謝には全く影響をおよぼさなかった。糖尿病ラットにおけるTrp-ニコチンアミド (Nam) 転換率は健常ラットの1/3程度にまで低下していた。 N 1-メチルニコチンアミドが体内に蓄積しやすい代謝状態にあった。この現象は体内の遊離状態のNam濃度の上昇を引き起こす可能性がある。遊離型のNamは, poly (ADP-ribose) 合成酵素やヒストンデアセチラーゼなど種々の酵素の阻害剤である。したがって, 糖尿病時にはNam代謝変動による影響が表れる可能性があり, さらなる研究が必要である。