本研究は,従来不明であった分子内に共役二重結合を有する脂肪酸について,その栄養生理作用を試験管試験から細胞培養試験,動物試験まで幅広く検討を行い,食品への応用を目指した。はじめに食品や生体試料中の共役脂肪酸の定量法を確立し,さらにその酸化安定性がグリセリド構造をとることにより向上すること,抗酸化物質としてビタミンEの使用が有効であることを明らかにした。そして,動物試験で共役脂肪酸の体内動態と脂質代謝への影響を検証した。また,本研究により,共役脂肪酸による抗癌作用,腫瘍血管新生抑制作用,抗肥満作用を新たに見出した。以上より,食品に共役脂肪酸を応用するために安全性や有用性を示した。本稿では,特に共役リノレン酸に関する知見を中心に概説したい。