難消化性多糖類の消化吸収機能に及ぼす影響を明らかにする目的で, セルロース, 寒天末, κ-カラギニン, アルギン酸ナトリウム, コンニャクマンナン, ペクチンを5%含む飼料を, Sprague Dawley系雄ラット (体重78~88g) に4週間投与し, 以下の結果を得た。 1) 実験に用いた難消化性多糖類は, いずれも, ラットの体重増加量には有意な影響を与えなかった。アルギン酸ナトリウム, κ-カラギニン, ペクチン, コンニャクマンナソの各群では, 消化管の重量と長さが増加する傾向があり, とくに, アルギン酸ナトリウム群では, 顕著であった。しかし, セルロースと寒天群では, 有意な影響がみられなかった。 2) 糞便量 (乾物) は, コンニャクマンナン, ペクチン, アルギン酸ナトリウムの各群では, コントロール群と有意差はなかったが, セルロース, 寒天, κ-カラギニンの各群では, 有意に増加した。タンパク質のみかけの消化吸収率は, アルギン酸ナトリウム, κ-カラギニン, ペクチン, コンニャクマンナンの各群で有意に低下するが, セルロースと寒天群では有意な影響はみられなかった。脂質のみかけの消化吸収率は, アルギン酸ナトリウムとベクチン群においてのみ, 有意に低下した。 3) 膵臓に含まれるアミラーゼとプロテアーゼの活性は, 寒天, κ-カラギニン, アルギン酸ナトリウム, コンニャクマンナン, ペクチンの各群においては有意な影響はみられなかった。セルロース群では, プロテアーゼの活性は有意に低下したが, アミラーゼの活性には, 有意な影響がみられなかった。 小腸内容物に含まれるアミラーゼの活性は, 難消化性多糖類の投与によって上昇する傾向があり, アルギン酸ナトリウムとκ-カラギニン群では有意な増加であった。プロテアーゼの活性は, アルギン酸ナトリウム群では, 有意に増加し, コンニャクマンナン群では, 有意に低下していたが, その他の群では変化がなかった。 4) 難消化性多糖類の0.2%水溶液の粘性は, コンニャクマンナンとアルギン酸ナトリウムで高く, 多糖類含有飼料の5%水懸濁液の粘性は, アルギン酸ナトリウムで最も高かった。 以上の結果から, 難消化性多糖類の投与によって起こるタンパク質と脂質のみかけの消化吸収率の低下は, その粘性が関与しているものと思われた。