玄米中のIHPがZnや他のミネラルの代謝にいかなる影響をおよぼすかを知るために, ラットを用いて, 飼料中のIHP/Znのモル比10, Ca含量0.5%, タンパク質水準10%の餌を35日間与えて実験を行なった。また同時に添加したNa-phytateの影響についても調べた。さらにミネラルとIHPとの複合安定性の強さを各pHで測定した。この結果を以下に要約する。 1) 玄米食区ラットの下肢左脛骨中のZnとCu, ひ臓中のFe, 血清中のCu含量は, 対照区より有意に低下しており, 玄米中のIHPにより飼料中のZn, Cu, Feの吸収が阻害されることを示した。 2) Na-phytate添加区ラットのひ臓中のFe含量は, 対照区に比べて有意に低かった。この現象はひ臓のみで観察された。 3) 肝臓, 腎臓, 睾丸, 筋肉中のミネラル含量には, 玄米中のIHPあるいは添加したNa-phytateの影響は認められなかった。 4) モデル実験によるミネラルとIHPとの複合安定性の強さはpHによって変化し, pH7.0でCu>Fe>Zn>Ca>Mg, pH7.5でFe>Zn>Cu>Ca>Mg, pH8.0でFe>Zn>Mg>Cu>Caの順であった。これは本動物実験の結果を考慮する参考となるものと考えた。