洋種ホウレンソウを材料に用い, 栽培環境の違いが, 植物体内のL-アスコルビン酸含量に及ぼす影響を, 植物の形態とも関連させて, 食品栄養的な見地から検討した。栽培は, 屋外自然区 (A区: 相対照度100%), 屋外遮光区 (B区: 相対照度25~32%), ビニールハウス区 (C区: 相対照度25~32%, 加温) の3処理区で行なった。L-アスコルビン酸の定量は, 高速液体クロマトグラフ (HPLC) によって行なった。 1) 葉の形態を調べるためSLA (葉面積cmcm2/葉身乾重) を計算した。B, C区でのSLA値は, A区より大きく, 遮光処理により葉が薄くなったことを示している。 2) 生重100g当たりのL-アスコルビン酸含量は, A区>B区>C区を示した。遮光処理によってL-アスコルビン酸含量は減少したが (p<0.01), 遮光条件下の加温による効果は, 統計的には認められなかった。 3) 単位重量当たりのL-アスコルビン酸含量と, 葉身部のクロロフィル含量との間には, 有意な正の相関関係が認められた (r=0.647, p<0.01)。 4) ビニールハウスで栽培されたホウレンソウは, 生育が早く, 形も美しいが, 露地栽培と比べて, 単位生重量, および, 単位乾重量当たりのL-アスコルビン酸含量が低下しており, これは, 栽培環境の光の減少と, 加温による生育促進が原因と考えられた。