洋種ホウレンソウを材料に用い, 栽培環境の光照度, 温度, 培地鉄濃度の違いが, 植物体内の鉄含量に及ぼす影響を, 食品栄養的な見地から検討した。栽培は, 1982年9月から11月にかけて, 次の条件で行なった。屋外自然区 (A区: 相対照度100%), 屋外遮光区 (B区: 相対照度25~32%), ビニールハウス区 (C区, 遮光: 相対照度25~32%, 加温栽培区) の3処理区で行なった。鉄含量の定量は, 原子吸光光度法によって行なった。 1) 葉身部乾重100g当たりの鉄含量は, 遮光処理によって増加したが (p<0.05), ビニールハウス区での遮光条件下での加温効果は認められなかった。 2) 葉柄部乾重100g当たりの鉄含量は, 遮光処理によって増加したが (p<0.05), B区とC区との間では, 有意差は認められなかった。 3) 培地鉄濃度 (Fe-EDTA) を, 3.65, 14.6, 29.2, 51.1 ppmの4段階に変化させた場合, 葉身部および葉柄部乾重100g当たりの鉄含量に有意差は認められなかった。 4) 個体当たりの葉身部に含まれる総鉄量と, 個体当たりの葉面積, 葉身部重, 地上部重との間には, それぞれ, 有意な正の相関関係が認められた。 5) 個体当たりの葉柄部総鉄量と, 葉柄部乾重, 地上部乾重との間にも, 有意な正の相関関係が認められた。