泌乳期の異なる人乳および牛乳のタウリンとその他の遊離アミノ酸を定量した。また育児用粉乳へのタウリン補足が乳児の血清タウリン値に及ぼす影響を母乳栄養児と比較した。 人乳のタウリン含量は全泌乳期ともグルタミン酸についで多かった。初乳後期, 移行乳期の泌乳4~7日のタウリン値より, 泌乳30日の成乳では有意に低下したが, 全遊離アミノ酸中にタウリンが占める割合はほぼ一定であった。 牛乳のタウリン含量は初乳期 (泌乳3日) では人乳と同程度の含量を示したが, 泌乳14日では初乳の約1/3, 育児用粉乳の原料に供せられる合乳では約1/10に減少し, 全遊離アミノ酸中に占める割合も減少した。全遊離アミノ酸の総量は人乳のほうが牛乳より多く, 泌乳期に伴いともに減少した。 その他のアミノ酸含量は泌乳期によってさまざまな変化がみられたが, とくに初乳期における人乳のプロリンの高値, 牛乳のグリシンの高値が顕著であった。またリン脂質関連物質であるエタノールアミン, ホスホエタノールアミン, ホスホセリンが人乳, 牛乳ともに検出された。 タウリン補足による乳児血清タウリン値への影響は, 未熟児および新生児初期に明らかに認められた。育児用粉乳に人乳レベルまでタウリンを補足することにより, 未熟児, 成熟児の血清タウリン値は母乳栄養児に近似した。