食物から摂取されたビタミンEの生体内での移行が, 生体側の栄養状態によりどのような影響を受けるかという問題を検討する目的で, ラットを用い食餌中のタンパク質の量や質を変化させた場合と, コレステロール負荷食を与えた際および実験的高脂血症を誘起させた際のα-Tocの移行について観察し, 以下の結果を得た。 1) 摂取タンパク質の影響 (1) 生後約5週齢のラットに低タンパク食 (5%) を6週間投与した結果, 標準食と比べ血清と肝臓のα-Toc量には有意差は認められなかったが, 赤血球中のα-Toc量および血清のα-Toc/T-chol. の比が低タンパク食群において低下した。10%タンパクレベルでは, 赤血球中のα-Toc量のみ減少した。 (2) 食餌中のタンパク質をミルクカゼインと大豆タンパクの2種とし, おのおの6週間投与した後の各組織のα-Toc量は, 大豆タンパク食群においては, 血清, 赤血球および肝臓のα-Toc量と血清のαToc/T-chol. 比がカゼイン食群と比べ低下した。 2) 脂質の影響 (1) 生後約5週齢のラットにコレステロール負荷食を6週間投与したところ, 対照に比べ肝臓中のα-Toc量は著増したが, 血清, 赤血球中のα-Toc量に有意な差は認めなかった。 (2) Triton WR-1339静注により実験的高脂血症を誘起させた際の脂質の挙動とα-Tocの移行を観察したところ, Triton静注により短時間に血清中のα-Toc量が著増し, 肝臓と赤血球中のα-Toc量は低下した。 肝臓および血清のα-Tocの動きは, 脂質の動きと一致した。