幼若ラット (Sprague Dawley系, 雄, 3週齢) を用いて, V.A貯蔵量および過酸化脂質量に対するPCBの作用が, DDTとの複合によって増強されるかどうか, およびこれらに対するP-450の誘導の関連, さらに過剰のMet, とV.Eの添加の効果について検討し, 次のような結果を得た。 1) PCBをそれぞれ0.01, 0.025%含む飼料を10日間ラットに投与したとき, 肝臓重量の増加, 肝臓V.A量の著明な低下と過酸化脂質の上昇, P-450の誘導がみられた。また, 体重の増加はPCB 0.01%食では抑制されなかったが, 0.025%食において有意な抑制を認めた。 2) DDTをそれぞれ0.005, 0.01, 0.02, 0.03%含む飼料を10日間投与したとき, ラットの体重増加の抑制はみられなかった。肝臓重量は, 0.01%食以上で有意な増加がみられた。肝臓のV.A量は, 0.02%食以上で有意な低下がみられた。これらの結果から, DDT投与の影響は0.01%食以上において肝臓重量の増加, 肝臓のV.A貯蔵量の低下などPCBと類似の作用を有することが判明した。 3) PCB 0.025%+DDT 0.01%の複合投与時における体重増加は, DDT単独投与に比べ有意に低下したが, PCB単独投与時に対しては有意差はなかった。しかし, 肝臓重量はDDTとPCBの単独投与に比べて有意な増加を示した。 4) PCBとDDTの複合投与時の肝臓および血清のV.A量は著しく低下するが, その低下はPCB単独投与とほぼ同程度であった。 5) 肝臓の過酸化脂質は, PCBとDDTの複合投与による顕著な増加は認められなかった。 6) 肝臓ミクロゾームのP-450は, PCBとDDTの単独および複合投与のいずれの場合も増加したが, 複合投与による作用の増強はみられなかった。 7) PCBとDDTの複合投与による肝臓重量の増加, 体内のV.A貯蔵量およびP-450の誘導に対してMet. とV.Eの過剰投与の効果は認められなかった。過酸化脂質の増加は, 過剰のV.Eで抑制されたが, Met. には効果がなかった。