同一食事について秤量法, 買上げ計算法, 思い出し法の3種類の調査を行ない, その結果につき四訂日本食品標準成分表を用いて, カルシウム, リン, 鉄, カリウムを計算した。さらに買上げ計算法によるサンプルをホモジナイズし, 湿式灰化を行なったのちに原子吸光法と高周波誘導結合アルゴンプラズマ発光分光 (ICP) 法とでカルシウム, リン, 鉄, カリウムを測定した。測定によって得られた実測値と上記3調査方法による計算値とを比較検討し, 次のような結果を得た。 1) 実測値と計算値の間には, カルシウムで, 秤量法r=0.799, 買上げ計算法r=0.800, 思い出し法r=0.665, リンで, 秤量法r=0.840, 買上げ計算法r=0.843, 思い出し法r=0.627, 鉄で, 秤量法r=0.565, 買上げ計算法r=0.733, 思い出し法r=0.545, カリウムで, 秤量法r=0.857, 買上げ計算法r=0.746, 思い出し法r=0.742といったごとく強い相関関係を認めた。 2) 実測値と計算値の平均値間には対応のあるt-検定を行なったところ, 秤量法ではリンとカリウムが有意に高く, 買上げ計算法ではカルシウム, リン, 鉄が有意に低く, 思い出し法ではカルシウムが有意に低いという結果が得られた。 3) 本調査を行なった地域では, ミネラル群はおもに穀類・野菜類より得られており, これらのものはミネラル含有量が比較的少なく, また産地・季節等の影響を受けやすいために, 従来の報告と異なった結果を与えたものと思われた。したがって, ミネラルに関する栄養指導を行なう場合には慎重に考慮する必要があり, できうれば実測することが望ましいと考えられた。