加齢に伴う生理的諸機能の低下, それに加えて生理的, 精神的食欲減退に伴う栄養素摂取量の低下は, 低栄養および免疫能の低下をもたらしている。高齢者における免疫能の低下は死亡原因の主位を占めるガンや感染症を重篤にしており, 臨床においては栄養状態による免疫能の評価をどのようにするかが大きな課題となってい 本研究では, 加齢に伴う栄養, 免疫能の変化をとらえ, そのなかで免疫系各因子の生体防御機構におけるそれぞれの役割と栄養系各因子との相互の関係を検討した。さらに免疫能評価に関与する栄養系指標について高齢者の特異性について検討した。 対象は60歳以上の健常者48例, 入院患者121例 (ガン58例, 感染性疾患21例, その他の疾病42例), (東京都養育院付属病院) について, 栄養系指標として血液性状, 血漿タンパク, コリンエステラーゼ, 総コレステロールおよび免疫系指標として補体溶血活性, C3, C4, C5, 免疫グロプリンIgG, IgM, IgAを検討の対象とした。 栄養系指標としては血液性状, 血漿タンパクは70歳代で顕著に低下するのに対し, Ch-E, T-chは70歳代までは正常を維持し, 80歳代で低下する傾向を示した。これらには性差が認められ, 血漿タンパクは男子が高く, Ch-E, T℃hは女子が高く, また女子の貧血現象は70歳代まで持続した。 補体系, リンパ球はCh-E, T-ch, TPとの相関が高 く, 栄養系の指標として従来用いられているTP, Albは高齢者の場合必ずしも適当な指標ではない。つまり, 低TP, 低AlbでもCh-E, T-chが正常範囲にあればC3の正常が80%から100%も認められており, 高齢者における免疫能の評価にとってはむしろ, Ch-E, T-ch値の解釈を重要視することが必要ではないかと考えられる。