ラットに無処理粉乳および乳酸発酵粉乳をそれぞれ給与した後, 経時的に胃内窒素形態分布と門脈血漿遊離アミノ酸濃度を調べた。 無処理粉乳区および発酵粉乳区のいずれでも, 胃内窒素の主体は純タンパク態窒素であった。胃内全窒素に占める非タンパク態およびアミノ態窒素の割合は, 粉乳給与O. 5時間後から4.5時間後まで, いずれも発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区より有意に高かった。胃内容物の胃滞留時間は, 発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区よりも短い傾向が認められた。胃内pHは胃底部では, 発酵粉乳区のほうが無処理粉乳区より有意に低かったが, 幽門部では両区の間に有意な差が認められなかった。 門脈血漿遊離アミノ酸濃度は, 発酵粉乳区では粉乳給与1時間後に最高濃度に達したが, 無処理粉乳区の最高濃度は4.5時間後であった。1時間後の濃度は発酵粉乳区のほうが, また4.5時間後は無処理粉乳区のほうがそれぞれ有意に高かった。 これらの結果から, 牛乳の乳酸菌による発酵処理は, 乳タンパク質の消化吸収に促進的に作用していることが示された。 なお, 本論文の要旨は1984年第38回日本栄養・食糧学会総会において発表した。