以上の結果は, 次のようにまとめることができる。 1) 調理品においては多様な食品材料や調味料の混合があるので, 食塩量の算定にナトリウムあるいは塩素のどちらの定量結果を用いても全般的にはほぼ同様な値を得ることができる。 2) しかし, 塩素定量を基礎とする算定値は, ナトリウム定量を基礎とするものに比べ高い算定値を示す傾向があり, ナトリウム電極法では水分補正をしないと算定値がさらに低くなる傾向が見られた。 3) 原子吸光法では調理の過程で加熱などの抽出に相当する操作があるため, 調理品試料からのナトリウム抽出に1%塩酸を用いる意義は低いと考えられた。 4) 食塩の生理学的意義はおもにナトリウムの作用にあると考えられるから, ナトリウム量を算定の基礎とすることが現実的であるが, 測定範囲の広さでは, 検量線の曲線補正機能のある原子吸光法が, 操作の簡便性ではナトリウム電極法が優れていた。 5) 塩素濃度計は, 塩素の定量には従来の滴定法よりも定量範囲が広く, 操作も簡便で優れていたが, 調理品の食塩量の算定には特別の利点を見いだせなかった。