没食子酸添加による各油脂中のトコフェロール (Toc) の熱酸化防止効果ならびに没食子酸添加大豆油で調製した即席めんの酸化安定性について検討した。 1) AOM試験管使用時の180℃, 15時間加熱大豆油, とうもろこし油, オリーブ油中のToc残存率はそれぞれ83.4, 77.4および0%であったのに対し, 0.1%没食子酸添加の場合, Toc残存率はそれぞれ98.0, 92.0, 95.0%であった。すなわち, オリーブ油以外の油脂についても没食子酸の添加は油脂中のTocの熱酸化を防止した。 2) 油脂に添加した没食子酸は加熱に伴いしだいに減少し, その減少傾向はTocに比べて速い。 3) Toc除去大豆油, Toc除去オリーブ油に添加した没食子酸の加熱時の分解率は, Tocを除去していない油脂に比べて高い。しかし, Toc除去油にα-Tocを添加した場合には, 没食子酸の分解をかなり抑制した。 4) GA添加大豆油を180℃で10時間加熱後, 60℃で保存し, 保存中のToc, 没食子酸量の変化を調べた。保存日数が長くなるにしたがい, 両者の分解量は増し, ことに, Toc除去油の場合は, Toc未除去油に比べて没食子酸は短時日で完全に分解した。同様, 没食子酸未添加油の場合, 油脂中のTocは速やかに分解した。 5) 生中華めん揚げ油 (鉄鍋使用) 中のToc分解率は, AOM試験管使用時の加熱に比べて高く, 没食子酸添加によるToc熱酸化分解防止の効果は低かった。 揚げ即席めんの酸化安定性は, 没食子酸添加物で調製したほうが, 未添加調製即席めんより少し高い程度であった。したがって, 揚げ物食品の酸化安定性と揚げ油中のTocの残存率を高めるためには, 没食子酸の添加量を0.1%より多くする必要がある。