未利用タンパク質源であるスジエビ筋肉タンパク質について, その性質および凍結貯蔵の影響をアクトミオシンCa2+-ATPase活性を指標として検討し, 形態的に酷似しているオキアミのものと比較考察した。 1) スジエビ粗アクトミオシンCa2+-ATPaseの生化学的性質を検討した。その温度安定性は, オキアミに比べて非常に高く, pH 7.5, 15℃で22時間保持しても約70%の活性が残存していた。Ca2+-ATPase活性は, 中性域より酸性およびアルカリ性域で高く, そのpH安定性は中性で最も高かった。また約7mMのCa2+の添加で, その活性は最大となった。これらの生化学的性質では, オキアミと異なりスケソウダラ, ホッケ等の魚類に類似していた。 2) スジエビ尾部を-20℃および-80℃で貯蔵し, その間に生じる変化を検討した。-20℃貯蔵において尾部のホモジネートのCa2+-ATPase活性は, 25日目で約30%上昇した。また, 0.6M KCl溶液に対するアクトミオシンの溶解性および粗アクトミカシンCa2+-ATP-aseの温度安定性は, 徐々に減少したが, 透過電子顕微鏡観察においで筋原繊維の構造に変化を認めることはでなきかった。このような傾向は, -20℃凍結操作および貯蔵により急激な品質の劣化や構造破壊を生じるオキアミとは異なり, 凍結貯蔵に対してスジエビが安定であることを示している。一方, -80℃貯蔵では貯蔵中の変化は見られなかった。 以上のことより, スジエビはオキアミに形態的には酷似しているものの凍結貯蔵に比較的安定で劣化しにくく, 食品素材として有望な性質を保持しうる可能性が示唆された。