未硬化パーム油 (P) および硬化パーム油 (HP), ならびに硬化度の異なるなたね油について, 加熱時における油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解度合, 加熱後の油脂の酸化安定性, ならびに硬化油中のTocの熱分解防止に対する没食子酸 (GA), チオジプロピオン酸 (TDPA) およびレシチンなどの効果について検討した。 1) 硬化度の低いいわゆる微水添HPとPとの間では, 加熱による油脂中のTocの熱分解率には差がなく, 180℃, 10時間の加熱でP中のTocの残存率は59.8%, HPで59.3%であった。加熱油の熱酸化度 (CV, An. V) はHPのほうが低く, 重量法試験からみた酸化安定性も高かった。 2) なたね油 (R) では, 180℃, 10時間の加熱で油脂中のTocの残存率は57.8%, その硬化なたね油 (HR (I)), (HR (II)) で34.7および5.9%で, 硬化度の高いなたね油 (HR (II)) ほどTocの残存率は低く, いわゆるToc分解量が多かった。 自動酸化に対する油脂の酸化安定性は, HR (II) >HR (I) >Rの順で, 硬化度の高いなたね油ほど安定性は高いが, 加熱後では, その酸化安定性は, HR (I) >HR (II) >Rの順になった。HR (II) の加熱による油脂の酸化安定性の急激な低下は, 油脂中のTocの完全消失によるものと考えられる。 3) PとHP中のTocの熱分解に対しGA, TDPAなどは防止効果を示した。 4) 180℃, 10および20時間加熱時のHR (II) 中のTocの残存率は5.9および0%に対し, GAを添加した場合のTocの残存率は66.0および25.7%であった。 HR (II) 中のTocの熱分解に対するGA, TDPA, レシチンの効果は, いずれも大きな防止効果を示した。三者間では, Tocの熱分解防止効果には大きな差は認められなかった。