加熱による油脂中のトコフェロール (Toc) の熱分解に対するカテキン (CT), エピガロカテキン (EGC), エピガロカテキンガレート (EGCG) などのカテキン類, ならびにカテキン混合物の効果について検討した。 1) カテキン類を添加した硬化なたね油では, いずれもTocの残存率は無添加油に比べて高い。なかでもCTが最も防止効果が高く, 180℃, 10時間の加熱でTocの残存率は29.5% (無添加油でTocの残存率7.0%), ついで, EGC, EGCG, カテキン混合物の順で, Tocの残存率はそれぞれ22.3, 18.8および15.7%であった。 2) 加熱後の油脂の酸化安定性は無添加油に比べ, CT, EGC, EGCG, カテキン混合物添加油のほうが高い。 3) カテキンの添加量が多いほどTocの熱分解をより多く防止し, 加熱後の油脂の酸化安定性も高い。 4) Tocの熱分解に対するCTとCT-クエン酸混合物添加は同じで, クエン酸併用によるより以上のTocの分解防止効果は認められなかった。しかし, 加熱後の油脂の酸化安定性はCT単一添加油よりもCT-クエン酸混合物添加油のほうが高い。 5) 大豆, とうもろこし, オリーブ, 硬化なたねなどいずれの油脂についてもCT添加によるTocの熱分解防止効果は認められた。 6) Tocの熱分解に対するCTと没食子酸 (GA) の比較では, GAのほうが防止効果が大きい。 7) CT, GA, 大豆レシチンなどの添加した加熱油のアニシジン価, 酸化酸 (石油エーテル不溶酸化脂肪酸) の割合は, GA添加油が最も低く, ついで, CT, 大豆レシチン添加油の順であった。一方, 残存Toc量はGA>CT>大豆レシチン添加油の順に多い。 8) 加熱大豆油から得た酸化酸を硬化なたね油, 大豆油に添加し, 60℃で保存した。保存1晩で油脂中のTocが急減し, 両油脂とも0.1および1.0%の酸化酸添加で, Tocは22.0および53.3%分解した。油脂中のTocの分解は酸化酸が大きく関与していることがわかった。