某女子大学学生25名を対象に7日間にわたる食物摂取調査を行い, エネルギーおよび各種栄養素の摂取量を計算によりもとめた。また同調査期間中に採血および24時間蓄尿を実施し, 血漿, 尿中亜鉛濃度を原子吸光分析法により測定した。 1) 血漿中亜鉛濃度の平均値は749±94μ9/ l , 1日の尿中亜鉛排泄量の平均値は366±107μg, クレアチニン19当たりの濃度で351 (1.5) μgであった。 2) 175人日分の食事記録より1日当たりのエネルギーおよびタンパク質摂取量の平均値はそれぞれ1, 648±281kcal, 63.2±11.4gであった。また, 亜鉛摂取量は6. 5±1.4mg, 体重1kg当たり0.125±0.030mgであった。 3) エネルギーおよび各種栄養素摂取量の間の相関係数を計算したところ, 亜鉛摂取量との間で大きな係数が認められたものはタンパク質 (0.800), リン (0.799), 鉄 (0.736) であった。この相関行列をもとに因子分析を行った結果, 四つの因子が抽出されこの4因子において亜鉛と類似した因子負荷量のパターンを示したものはタンパク質のみであった。 4) 食品群の中で亜鉛摂取量に対する寄与率の最も大きい食品群は米類であり, 豚肉類, 大豆・大豆製品, 乳類, 乳製品類の順であった。 5) 単位体重当たりの亜鉛摂取量と血漿, 尿中亜鉛濃度の間に有意な相関は認められなかった。 以上の結果より, 1) 今回対象とした女子大学学生の亜鉛摂取量はかなり低値であり, 総体としての摂取食品量が少ないこと, 亜鉛含量の低い嗜好飲料, 野菜, 乳, 果物等の摂取量が多いのに対し, 亜鉛含量の高い米2肉, 大豆等の摂取量が少ないことがその原因と考えられた。 2) 低亜鉛摂取状態は血漿, 尿亜鉛に直接反映しておらず, 亜鉛の生物学的半減期が長いことを考慮すると, 血漿・尿中亜鉛濃度はかなり長期にわたる過去の亜鉛栄養状態を反映していると考える必要のあることが示唆された。