加熱油より分別した酸化生成物 (石油エーテル不溶酸化脂肪酸) を大豆油, 硬化なたね油に添加し, 60℃保存および180℃加熱による油脂中のトコフェロール (Toc) の分解, ならびに酸化生成物によるTocの分解に対する没食子酸 (GA) の防止効果などについて検討した。 1) 180℃で30時間加熱した大豆油から分別した酸化生成物を0.1, 0.5, 1.0および1.5%添加した大豆油中のTocは, 60℃, 1日保存で20.0, 30.2, 52.4および65.9%分解した。 2) 同時間の加熱であれば, 大豆油から分別した酸化生成物のほうが硬化なたね油の酸化生成物よりも油脂中のTocを分解させる作用は大きい。 180℃で, 10, 20, 30時間加熱した大豆油から分別した酸化生成物による大豆油中のTocの分解率は, 60℃1日保存でそれぞれ33.0, 48.0および52.0%であった。すなわち, 加熱時間の長い油脂から得た酸化生成物ほど油脂中のTocをより多く分解させた。 3) 60℃保存時の大豆油の過酸化物価の上昇は, 酸化生成物添加油ほど高いが, その酸化生成物添加油にGAを添加したものは過酸化物佃の上昇は抑えられた。1.0%酸化生成物添加大豆油のTocの残存率は保存2日目で5.0%であったのに対し, GA併用の場合は, Tocの分解は抑えられ, 保存7日目でも75.0%のTocが残存していた。 4) 油脂を含まないアルコール溶液系でもTocは酸化生成物により分解された。一方, GA併用の場合は, 酸化生成物によるTocの分解はかなり防止され, 保存5日目でTocの残存率は76.0% (GA未添加の場合, 33.0%) であった。 5) 自動酸化時と同様, 加熱時でも酸化生成物によって油脂中のTocは著しく分解が促進され, 0.1%酸化生成物添加大豆油の180℃, 5, 10時間加熱でTocの分解率は35.0および50.0%であった。 6) 30時間加熱大豆油のアニシジン価とカルボニル価176.9と29.3に比べ, 同加熱油から得た酸化生成物のアニシジン価とカルボニル価は560.6と44.6であった。また, 酸化生成物のペルオキシド, エポキシド, アルデヒド, α-ケト酸の呈色反応はいずれも陽性であった。 酸化生成物によるTocの分解機構は, 各官能基に富んだ酸化生成物によって酸化的にTocが分解されるものと思われる。