人乳および牛乳の鉄飽和ならびに脱鉄ラクトフェリンを in vitro でpH 4.5においてペプシン, 次いで, pH 7.5においてトリプシンにより連続消化し, 6% TCA可溶性窒素量, 鉄結合能, 免疫学的反応性, ディスクゲル電気泳動および免疫電気泳動の経時的変化を観察した。さらに, ラクトフェリン消化物の病原性大腸菌 E. coli 0111に対する静菌作用についても検討し, 以下の結果を得た。1) ペプシン2時間およびトリプシン3時間消化後における6% TCA可溶性窒素量の増加率ならびに鉄結合能と免疫学的反応性の残存率は, それぞれ, 人乳鉄飽和ラクトフェリン6.0, 85.0, 100%, 人乳脱鉄ラクトフェリン32.0, 44.4, 62.9%, 牛乳鉄飽和ラクトフェリン5.2, 82.8, 89.5%, および牛乳脱鉄ラクトフェリン35.0, 39.5, 34.7%であった。2) ディスクゲル電気泳動および免疫電気泳動のパターンは, 人乳と牛乳の脱鉄ラクトフェリンとの間で著しく異なった。3) 鉄飽和ラクトフェリンは, 消化の有無にかかわらず, 人乳, 牛乳ともに静菌活性を示さなかった。これに対して, 人乳および牛乳の脱鉄ラクトフェリンでは, 消化の時間経過とともにその活性は著しく減少したが, ペプシン2時間およびトリプシン3時間消化後においても依然として静菌作用が認められた。