生後6カ月齢の経産ラット48匹を用いて飼料中タンパク質, カルシウムおよびリン量が腎臓にどのような影響を与えるかについて検討を行った。 AIN-76精製飼料を基準としてL8 (27) 型直交表の割り付けに従い8種類の飼料を調整した。取り上げた因子は, タンパク質, カルシウム, リンの3因子である。また, 含有量は, 基準量あるいは, その2倍量とした。飼料供与3カ月目に4日間の出納実験を行いその後エーテル麻酔下で屠殺し, 腎臓および大腿骨を摘出しサンプルとした。その結果 1) 飼料摂取量, 体重増加量には, 各群間で差は認められなかった。 2) カルシウム出納については, タンパク質摂取量のみを増加させた群において尿中カルシウム排泄は増加した。タンパク質, リンともに増加させた群では, 尿中カルシウム排泄は抑制された。その他の出納結果もこれまで報告された成績と同様の結果が得られた。 3) 腎臓重量は, タンパク質増加群, リン増加群においてその他の群に比べて有意に高値を示した。腎臓中ミネラル (カルシウム, リンおよびマグネシウム) 含有量は, リン増加群において有意に高値を示した。 4) 腎臓の病理組織学的観察では, リン増加群において石灰化, 尿細管萎縮, 基底膜肥厚, 尿細管内腔狭小, 上皮の腫大等の所見が認められた。糸球体や主部尿細管には, ほとんど変化は認められなかった。outer st. とinner st. では, 尿細管の拡張, 上皮の変性, 剥離, 石灰沈着等の所見が認められた。細胞浸潤は, リンパ球を主とする軽度のものであった。 5) 大腿骨重量, ミネラル量については, 飼料による差は認められなかった。 6) これらの結果から, 高タンパク質摂取による尿中カルシウム排泄増加に対して, リンの摂取を高めるよりカルシウム摂取を高めるほうが有効であると考える。