雄ラットには, 20, 100, 500, および1,000mg/kgdiet, 雌ラットには100および1,000mg/kg dietの濃度でd-α-Tocを含有する飼料をそれぞれ与えて, 8週間飼育したのち, 血液および組織中のα-Toc濃度をHPLC法により定量した。また, 血清中の生化学値の変動を測定した結果, 以下の成績を得た。 1) 投与量の違いにより, ラットの成長に差は認められなかった。 2) 血漿中のα-Toc濃度は投与量の増加に伴って上昇したが, 赤血球中のα-Toc濃度は血漿の上昇率の1/2程度の低い上昇傾向を示した。 3) 対照群 (100mg/kg diet) で最も高いα-Toc濃度を示す組織は, 雄の場合, 副腎, 雌の場合は副腎および卵巣であった。精巣中のα-Toc濃度は投与量の増加とともに上昇した。 4) 下垂体中のα-Toc濃度は低く, 投与量による影響も少なかった。雄に比べて雌の濃度はやや高く, 有意差が認められた。 5) 肝臓中のα-Toc濃度は投与量の増加に伴い指数関数的に上昇した。 6) 大脳中のα-Toc濃度は雌雄ともに, 投与量の影響が最も小さく, 過剰投与による濃度の上昇は認められなかった。 7) 心臓, 肺, 脾臓, 腎臓のα-Toc濃度はいずれも投与量の増加とともに上昇し, 膵臓中の濃度は過剰投与時に副腎に次いで高い値を示した。腎臓中のα-Toc濃度はこれらのなかで最も低い上昇率であった。心臓中の濃度は雄に比べて雌がやや高い値を示し, 有意差が認められた。 8) 筋肉, 皮膚, 脂肪組織中のα-Toc濃度は脂肪含有量の高い組織ほど高い値を示した。筋肉中の濃度の過剰投与による上昇率は低かった。 9) 肝臓細胞分画中のタンパク質当りのα-Toc濃度は投与量に関わらず, ミクロゾームに最も高く, 次いで, ミトコンドリア, 上清, 核の順であった。 10) 血清の生化学値にとくに異常な値は認められなかった。 11) 血漿中の総脂質濃度とd-α-Toc投与量に正の相関が認められた。