大阪府下の事業所に勤務する健康な男性104名を対象にして, 血中および尿中セレン濃度を測定するとともに, 簡易質問紙を用いて高セレン含量食品 (パン, タマゴ, 肉類, 魚介類) の摂取状況, 喫煙量, 飲酒量を推定し, 血中および尿中セレン濃度の変動要因について検討した。血漿, 赤血球および尿中セレン濃度の幾何平均値は, それぞれ110ng/ml, 261ng/ml, 27μg/g creatinineであった。 赤血球セレン濃度は, 魚介類の摂取頻度との間に強い正の相関 (rs=0.479) を示した。また, 食品摂取頻度とともに, 年齢, 喫煙量, 飲酒量, Broca指数を説明変数に用いた重回帰分析において, 魚介類の摂取頻度のみが赤血球セレン濃度の変動要因として選択された。尿中セレン濃度は, 採尿前2食の高セレン含量食品の摂取と正の相関 (r=0.248) を示した。重回帰分析においても, 採尿前の高セレン食品の摂取のみが変動要因として選択された。 高血漿セレン濃度は, 採血前の高セレン食品の大量摂取と有意な関連があった。また, 重回帰分析においては, これに加えて, 年齢と飲酒量が血漿セレン濃度の変動要因として選択された。さらに, 年齢と強い負の相関を有する血清アルブミン濃度が, 血漿セレン濃度と正の相関 (r=0.236) を示した。 以上の結果は, 対象集団において, (1) 調べた要因の中では, 魚介類の摂取習慣が赤血球セレン濃度の最大変動要因である, (2) 尿中セレン濃度は採尿前のセレン摂取量を反映している, (3) 血漿セレン濃度は採血前のセレン摂取に加えて, 年齢と飲酒の影響を受けることを示している。